刊行情報:『BABELZINE』 Vol. 4

『BABELZINE』 Vol.4 は全12編の生きの良い本邦初訳のスペキュレイティブ・フィクションがたっぷり詰まって230ページの大ボリューム。

※ 翻訳小説は著者からの許可をいただいて翻訳・掲載しております。

収録内容

● カイリー・リー・ベイカー「不滅のリリィ」 恋人のYouTuberリリィを亡くしたアイリが望むのは、彼女の死を悼み、安らかに眠らせておくことだけ。しかしチャンネルを買収した企業はAIを用いてリリィを復活させることを試み……。現代のアテンション・エコノミーのグロテスクさに警鐘を鳴らした作品。

● コウジー・A・デイ「耐性者」 ナノボットが拓いた近未来に、取り残された者たちがいる。科学がもたらした孤独の前に、ふたたび差し出されたわずかな希望。排除されてきた者たちは、変化を恐れながらもそっとその希望に手を伸ばす。人間とテクノロジーの狭間を描いた傑作。

● MKRNYILGLD「CRISPRの手引き:ロー判決逆転後の世界で生命工学的に妊娠中絶をするためのDIYガイドブック」 人工妊娠中絶が禁止された近未来、妊娠についての「選択肢」を奪われた者たちの反撃がはじまる。人体を苛烈にハックせよ。ダークなバイオSF傑作の序章。

● MKRNYILGLD「CRISPRの手引き 第二章:生命工学であなたの卵子を破壊兵器に変え、一度で家父長制主義者に強制的に移植するためのガイドブック」 奪われた者たちの反撃は止まらない。さらに過激に、さらに苛烈に人体をハックせよ。

● デイヴィッド・D・レヴァイン「コラは人生 」 惑星シレーネで千年以上行われているグライダーを用いた空中大レース、それがコラ。人類で初めての飛び手である主人公は地球製の新型エンジンを携えてコラに挑むが、手強いライバルたちや過酷な気象環境を乗り越えて勝利を手にすることは出来るのか?

● デリック・ボーデン「現代アメリカ摩天楼の回遊習性」 地価の上昇が極限に達した近未来のカリフォルニア。ナノテクノロジーによって建設される可動型集合住宅プレクサスは住宅問題の画期的な解決策と目されたのだが……デジタル時代のノマド生活を描いた風刺的短編。

● キャリー・ヴォーン「私たちが戦争中に遊んだゲーム」 長きにわたって戦い続けているエニスとガーント。大きな違いは、一方がテレパシー能力を持つということ。戦争で心の傷を負ったエニス人とガーント人の二人の兵士は、ゲームを通じて心を通わせていく。《2017年度ヒューゴー賞ノミネート》

● キャロリン・M・ヨークム「カーニバル・ナイン」 ゼンマイ仕掛けの体に与えられるのは、限られた「回転数」。制限ある日々のなかで、誰かのために生きることを見つめていく物語。 《2018年ローカス賞候補作》

●スーザン・パルウィック「すずめ」 終末が迫った世界で、ひとりシェイクスピアの論文を仕上げる学生。すべての終わりを目前にして、それでもなお書き続ける行いの意味とは。 アシモフ誌読者投票賞で第1席を獲得した、ポスト・アポカリプスSF。

●R・B・レンバーグ「触腕の都市」 今日は海の下の都市を訪れる日だ。眼の中で育つ真珠を売り払い、娘の命を救うはずの薬を手に入れるために……美しくも痛ましいイマジネーションに満ちた、夢と現実が交錯する現代ファンタジー。

●ゴードン・B・ホワイト「ゴードン・B・ホワイト、呪われたホラー作品を制作中」 あるホラー作家の支援サイトに登録した「あなた」は、毎月不可思議なポストカードを受け取ることになる。シャーリイ・ジャクスン賞候補となったメタフィクショナルなホラー短編。

●ケネス・シュナイヤー「無常の法則」 記された文章が絶えず変化する世界で、遺言を巡って遺族の遺産争いが勃発する……。奇想的思考実験と偽史の試みに満ちた、知的興奮を誘う一作。

●《評論》白川眞「ラビット・テスト」「CRISPRの手引き」—―人工妊娠中絶をめぐるSFについて

2025年5月発行 A5 230ページ 1500円

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